2008年11月16日日曜日

バラク・オバマ『合衆国再生』

合衆国再生―大いなる希望を抱いて

オバマ氏の大統領当選が決まった5日から読み始めて、ようやく読み終えた。

分裂や格差が広がるアメリカ合衆国で、共通の理想に向けて社会合意を再形成しようという、オバマ氏の政治的姿勢と政策提言が、多民族・多文化社会の申し子とでもいうべき彼の生い立ちや家族との生活、上院議員になるまでの市民との対話などのエピソードを巧みにからめつつ、説得力をもって記されている。

あくまで政治家による著作なので、こう言うと異論があるかもしれないが、アメリカの宗教事情を知り、民主主義社会のなかでの宗教の役割を展望するうえでも、本書、とくに第5章はタイムリーかつ最良のテキストの一つではないかと思う。もっと客観的に深く知りたい人は、森孝一『宗教からよむ「アメリカ」』堀内一史『分裂するアメリカ社会―その宗教と国民的統合をめぐって』などの研究書を併読することをお勧めしたい。もちろん、小原克博先生のPodcastもお勧めです。

2008年11月7日金曜日

筑紫哲也氏の訃報に接して

asahi.com(朝日新聞社):筑紫哲也さん死去 NEWS23前キャスター 73歳 - おくやみ

筑紫哲也編集長時代の『朝日ジャーナル』は、まだインターネットもなく情報格差の大きい地方都市に住む高校生にとって、東京の流行文化の貴重な情報源だった。もちろん他にもいろいろ雑誌や書籍、レコード、ラジオなどにも接してはいたが、大手新聞社から発行され、近所のスーパーの雑誌コーナーでも読める最も手直なメディアだったことは間違いない。この雑誌がフォローした「ニューアカ」ブームに触れなかったら、人文系の学問に興味を抱くこともなかったし(それまではどちらかというと理系少年だった)、「宗教学」などという学問があることを知ることもなかっただろう。

もう一つ思い出すのは、坂本弁護士一家殺害事件のきっかけとなったとされるTBSオウムビデオ問題の検証報道で、筑紫氏が言った「TBSは死んだ」という言葉である。あれから10数年が経ち、マスメディアは変わったのだろうかと思ってしまう。

ご冥福をお祈りします。